研究者としての先生の夢をお聞かせください。
■見寺
ヨーロッパへよく行くのですが、いつも思うことがあります。
それは、お洒落な大人が多いこと。
大人の文化が根付いていることですね。
欧州では子供たちが成長し出て行っても、
自立した生活を営む人が多い。
仕事を持っていきいきと洗練されたお洒落感覚で、
生活を楽しんでいる高齢者の姿をよく見かけます。
街に出れば、スーパーマーケットや公園、美術館、劇場でも、
杖や車椅子の高齢者や障がいのある人によく出会います。
つまり、加齢や障がいにもかかわらず、
積極的に生活を楽しむ姿がそこにあるのですね。
ほどほどの緊張感と責任感を持って生活することが、
生きがいを感じて健康的に暮らすために
必要だと考えられているように思います。
そして、そんな高齢者の方はみなさんお洒落なのです。
常に人と接していますから、
アイデンティティとしてのお洒落に感心が向くとも言えるし。
自己表現としてのお洒落を楽しみたいから、
活動的になるというのもあると思います。
今の日本ではどちらかというと、高齢者や障がいのある方を
家や施設の中でお世話をすることが
福祉だと考えられていますが、
これからは、ヨーロッパみたいに自立した
「生涯現役」の高齢者の方も増えてくることでしょう。
高齢者の生活の幅が広がり、
質が高まればますますファッションに
対するニーズも増えてきます。
ファッションは若者のものという
固定概念を拭い去りたいですね。
ヨーロッパでは高級な衣服や小物は
人生経験の豊かな人こそが身に着けて似合うものであり、
質の高いお洒落を楽しむ資格のある人である、と。
実は、現状のファッション産業において、
高齢者の洋服作りの基礎となる体型データや、
さまざまな身体的障がいに対応した
体型データといったものがほとんどありません。
そこで、今、私たちがそれを収集し
データベースとして蓄積しようとしています。
そんな私たちの研究で、
ファッション市場が今後盛り上がることが、
いきいきとした「ビューティフルエイジング」の社会に
つながっていくと思います。
「ユニバーサルファッション」には、
"さまざまな人生経験を経て、
年を重ねることは素敵なことなんだ!"
というメッセージが、込められているのです。