マンションや小さな事業所が並ぶ大阪、上町。
その一角の集合住宅の一階に、〈ドイトゥン〉がありました。
入口を入ってすぐ、カウンターの向こうには、
銀色のボイラーのような機械がふたつ。
落ち着いた珈琲ショップでありながら、
職人気質が感じられる工場のような風情も漂います。
2001年にこのお店をオープンされた店主・平田泰之さんは、
コーヒー業界における20数年にわたるキャリアのなかで、
一貫して自家焙煎にこだわり、コーヒーを作り続けておられます。
ご家庭で気軽に美味しいコーヒーを楽しむ方法や、
コーヒーを楽しむということにどんな効能があって、
平田さんが、特にシニアのかたにコーヒーをすすめる理由など、
さまざまなお話をお伺いしました。
店内の大きなロースターを見ても、
焙煎に対するこだわりが伺えますが。
■平田
焙煎というのは、輸入されたコーヒーの生豆に、
火を通して「煎り焼く」工程です。
コーヒーの味作りの最終工程で、焙煎で味が決まる、
といってもいいでしょう。
生豆の表面から芯の部分まで、
むらなく火を通すことが重要でそのため、
こんな大きなロースターで豆を回転させながら熱を
加えていきます。
その火の通し方も、豆の持っている性格によって、
熱を加える時間を分けて、
浅煎りから、中煎り、中深煎り、深煎りと変えていきます。
生豆の持っている酸味や甘みに、焙煎することで、
苦味や風味を加えていくわけですが、
美味しく感じるコーヒーを作るため、
豆の産地や種類によって、そのバランスを取っていくのが、
焼き手の仕事なのです。
簡単に言えば、
浅煎りのほうが程よい酸味のやわらかなコーヒーになって、
深く煎るほど、苦味と風味が深くなっていきます。
コーヒー豆は、世界地図上の北回帰線から、
赤道を挟んで南回帰線までのコーヒーベルトと言われる地域の、
約70カ国もの国で栽培されています。
その気候や風土によって性格がまるで違いますから、
それにあった焙煎をしていくのが、
美味しいコーヒー作りに欠かせないですね。
店では焙煎された豆の選別の工程も、大切に考えています。
コーヒーは穀物ですから、輸入された豆の中には、
未成熟なものや虫に食べられているものなどが、
数パーセント必ず混ざっています。
それをひとつひとつ手作業で取り除く、
「ハンドピック」という作業が、これも手間がかかりますが、
美味しいコーヒー作りには欠かせない作業です。
次に、「挽く」。
つまりお湯で抽出するために粉砕する工程です。
これは、そんなに気を使う必要もないのですが、
ただ、コーヒーには、脂質つまり油分があって、
これが空気に触れると酸化しはじめます。
酸化すると風味が悪くなります。
粉砕すると表面積が大きくなるので、より酸化しやすくなります。
だから、飲む前に飲む量だけ、挽く。
ご家庭で買ってきた豆を挽く場合でも、これで、
美味しく飲めると思います。
お店でコーヒーを買うとき、
個性もさまざまな産地のものが並んでいます。
また、比較的飲みやすく、安定した味が出るように
さまざまな産地の豆を混ぜ合わせたのが、ブレンドコーヒーです。
実際に、飲んで試して、好みの味を見つける。
そのとき、ぜひお店の人に焙煎の事など聞いてみてください。
好きな産地に出会ってその豆のことをもっと知れば、
コーヒーの楽しみがより深くなると思います。
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