COOCAN人探訪 >第2回 神戸芸術工科大学 ファッションデザイン学科 教授 見寺貞子さん

「モノ」と「ヒト」との素敵な関係を訪ねて COOCAN人探訪 クゥカンジンタンボウ

産・官・学がひとつになった取組みでユニバーサルな社会づくりへ。

ファッションショーが、原点だったということですね。

■見寺
ショーのモデルになっていただいたのは、
25歳から98歳までのさまざまな障がいを持つ人たちです。
その人たちの生活環境や衣類に関する問題点を調査した上で、
各障がい別に作品を制作し、
機能的でお洒落な服を中心にデザイン提案を行いました。
観客、モデル、学生、スタッフなどこの催しに参加したのは
1000人を超えましたね。
全員が大いに楽しみ、感動を分かち合うことが出来たと
思います。

後にアンケートを取ると、
高齢者や障がいのある人のお洒落に対する意識の変化が、
明確に現れました。
「お洒落への関心が高まった」
「みんなに喜んでもらって、本当にうれしかった」など。
つまり高齢者や障がいのある方の衣生活が、
自己の自立と自信に深くつながっている。
生活の質を高めたり、社会参加を進めるためには、
ファッションデザインは大変重要な要素であるということを、
再確認させられました。
このファッションショーは「ユニバーサルファッション」を
ライフワークとして認識するきっかけになりましたね。

本来ファッションとは、年齢や障がいがあるないに関わらず、
すべての人に平等に与えられた楽しみだと思います。
室内で着る機能性中心の介護衣料という
捉え方のものしかないのではなく、
すべての人が年齢、性別、能力にかかわらず、
いきいきとした生活や社会参加を促すため、
「ユニバーサルファッション」の果たす役割は、
ますます大きくなってくるのではないのでしょうか?

神戸から発信する
「ユニバーサルファッション」とは?

■見寺
大震災以降、神戸の街づくりの施策の大きな柱として
掲げられてきたのが、ユニバーサルデザイン(UD)です。
すべての人に安全快適な環境づくりをめざす
ユニバーサルデザイン(UD)という概念が、
それまでハード中心であった街づくりの中心に
掲げられるようになりました。

神戸の街づくりにはそれに加えて
「協働」と「参画」も重要と考えられています。
事業者、行政、そして研究教育機関、すべての市民が参画し、
協力し合ってユニバーサルな街づくりをめざす。
そのため、さまざまな分野の人々が集まって
「こうべUD広場(こうべユニバーサルデザイン推進会議)」
という組織が、立ち上がり活動を進めています。
その中でも神戸ならではの「お洒落で魅力ある街づくり」を、
というのも大変重要な方向性で、
私もメンバーのひとりとして、ユニバーサルファッションに関する調査・研究や講演を行っています。

神戸が街として服飾文化を発信していく中で、
やはり大切にしたいのは長く受継がれている文化だと
考えています。
日本でも西洋文化がいち早く入ってきた都市のひとつである
神戸は、いいものや本物を大切にして長く付き合うという
誇れる文化があるのですね。

ファッションにおいても
「神戸ファッション都市宣言(1973年)」以来
多くの企業が生まれ、
上品でハイカラなイメージを作り上げましたが、
「神戸エレガンス」と称される神戸のファッションは、
おばあちゃんから、お母さん、そして娘さんまで、
時代を超えて受継がれています。
年代や能力の垣根を越えるのが
「ユニバーサルファッション」ですが、
流行やトレンドに流されないという意味で、
時間の垣根も越えた「ユニバーサルファッション」
でもありたいですね。

2005年5月に設立された、ユニバーサルデザインを学生の視点から考えるプロジェクト「even art project(イーブン アート プロジェクト)」の作品。

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