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第7回 一級建築士 建築家 大野鶴夫さん

ふれあう、語る。場のコミュニケーションを通じて心の健康を

阪急宝塚線「豊中」駅を降りてすぐ。住宅街の中に直線のフォルムが美しいコンクリートの建物がありました。
上階が共同住宅になっているビルの一階、全面ガラス張りの開放的なスペースが、建築家大野鶴夫さんのオフィス兼ギャラリーです。中央の重厚な木製ドアを開けて中へ入ると、手がけられた建築作品のパネル、建築模型そして、これも大野さんの作品である美しい家具たちが迎えてくれます。
公共施設から、旅館、住宅と幅広い分野で、自然素材をつかった作品づくりを続けておられる大野さん。
空間のもたらす役割から、自然流儀の生き方まで、お話をお伺いしました。

身体的な衰えをカバーする設計。そして、
精神的な健康を育むライフスタイル。

建築や住まいという分野でお仕事をされている大野さんが考えるシニアの方の理想の住まいとは、どんなものでしょうか。

■大野
まず、シニアあるいは高齢者の定義ですが、
昔は60歳を超えたら還暦で高齢者の仲間入りでしたね。
でも今は、60歳を高齢者とは言いません。
男性で平均寿命が84歳位ですから、あと25年近く生きます。
60歳以降四半世紀ですから、大変ですね(笑)。
そんなシニア世代の生活に何が一番必要かといいますと、
精神面での活力の維持でしょう。
肉体的衰えは、カバーできる部分もありますが、
判断力の低下や、認知症にならないように、
精神面の健康を保つこと。
そのためには自分自身が高齢者であることを自覚することが、
まず大切だと思います。

私は自転車レースを趣味にしていますが、
タイムトライアルで、そりゃ、
40歳代の若い人に勝つ場面もありますよ。たまにはね(笑)。
でも、昨日できたから、今日も勝てるかと言ったら、
それができない。
持続できないのが若者と違うところです。
そういう年齢を客観視することで事故や、
身体を壊したりすることを防ぐのじゃないかな。

で、家ですが、やっぱりそんな高齢者の住む家を考えると、
バリアフリーは必要だと思います。
でも、何もかも段差をなくせばいいというものでもない。
衰えていく肉体の、その衰えの曲線がなるべく
なだらかになるようにするためには、
日常的に肉体を使わなくてはいけません。
つまり毎日の生活の中で、 負担なく身体を使えるようにする。

例えば私の設計した家では、
高齢者の方の個室も2階に作る、
そこで工夫が必要なのは、階段です。
できるだけ負担がないように行き来して
体を使ってほしいわけです。

一般的には一段が高さ20センチくらいで、13〜14段くらいですが、
今回設計した階段は、あえて、高さ15センチと少し低くして、
20段にしているんです。
踏み板は足裏に優しい木を採用し、
そしてそれを支えるフレームは鉄なんですが、
細くして乗ればしなるようになっています。
こうすれば、昇るというより、歩くように行き来できます。
中途半端な段差がいちばん危険なんです。
しっかりと段差を意識できたら、支障はないと言えます。

それと、高齢になればなるほど
昔の記憶だけが残されていきます。
若いころに住んでいた日本家屋の間取りの感覚、
インテリアデザイン、畳や板間といった自然素材の感覚が、
意識の中に深く残っています。
それらをうまく使って、肉体的な衰えを補うように、
空間に変化をつけ、
脳に刺激を与えるような設計が大事だと思います。
趣味の部屋とか、畑を持つとか、
若いころにはできなかった環境づくりも大切ですね。

新築でもリフォームでもですが、それを考えたとき、
今の理想を形にするのではなく、
将来を見据えた設計を考えることが重要。
ひとが年を重ねると当然、住まい方も変化します。
木造の家屋は50年以上もちますから、
住まい方が変化したら、その時々に改装して、
対応可能にしておくのが、家づくりの基本じゃないでしょうか。

車イスの生活になったらどうするのか。
子供が独立したら子供部屋はどうするのか、
といったようにね。

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